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創刊号(2013/9/1) 

聖火はどこへ 2020年オリンピック開催地まもなく決定

2013年09月01日 08:43 by shiori_yamashita_528
2013年09月01日 08:43 by shiori_yamashita_528

最近、この左のポスターをよく見かけるようになった。色とりどりの桜が目を引く。ご存じのとおり、2020年夏季オリンピックの開催地が決まる9月7日、125IOC総会が間近に迫っているのだ。今回の候補地候補はトルコのイスタンブール、スペインのマドリード、そして日本の東京の3都市。昨年の1月からの招致レースのゴールは目前だ。なおこの会議で、2020年からオリンピック競技に加わる種目も選ばれる。スカッシュ、野球・ソフトボール、そして物議をかもしたレスリング。この戦いにも注目だ。

話をもどすと、東京都はこの招致活動に75億円もの予算をつけている。このうち約半分は東京都の資金で賄われているため、万一招致に失敗すると大赤字を生んでしまうのはたやすく想像できる。国をあげての総力戦。今回は3立候補都市の概要をまとめた。

 

 

まずはトルコのイスタンブール。トルコはヨーロッパとアジアの中間に位置しており、それらの架け橋となる場所でオリンピックが開催されることに意味があるとしている。また一番のアピールポイントとしているのは、1896年からの近代オリンピックの長い歴史の中で、未だ一度もイスラム教圏が開催地となったことはない点である。2016年のリオデジャネイロは、南米初ということを大きな武器にして招致レースに勝利したが、今回もイスタンブールはイスラム圏でオリンピックを開催することがオリンピックの理念「文化の違いをこえて相互理解をはかり、平和な世界の実現に貢献する」ことにかなっていると主張している。しかし、近頃2004年のハンマー投げメダリストを含む30人以上もの選手をドーピング規定違反で権利をはく奪し、トルコのアスリート界でドーピングが広がっていることが発覚した。また今年6月末反政府デモが起こり、世界を震撼させた。治安に不安が残る。

政教分離の国トルコでは経済的な発展もなされており、過去4回の立候補の雪辱を果たせる可能性は十分にある。

 

次にスペインのマドリード。かの有名なサマランチIOC理事長(19802001)の息子、サマランチJr.(現IOC理事)の人脈をいかして、組織票があまりないといわれる選挙を勝ち抜こうとしている。ロビー活動も精力的に行っており、フェリペ皇太子がスピーチの檀上に立つなど国をあげての招致運動をアピールしている。施設・交通網での高い評価を得ており、懸念されている経済状況も大会の開催によってうまれる利益でまかなう、という大義名分をかかげている。ネックになるのが、意外にも隣国フランスだ。フランスのパリは2024年の開催地候補に立候補しているのだが、2024年は前回パリでオリンピックがあった1924年の百年後。"100年目のパリ”と銘打って熱心に招致に力をいれている。仮に2020年マドリードが選ばれた場合、2大会連続のヨーロッパでの開催は難しい。したがって2024年パリでの開催を希望するIOC委員は、今回はマドリード以外の候補地に投票するとみられている。同じヨーロッパ圏内でも意見がわかれてしまうのだ。

 

最後に東京。昨年5月には放射線、地震への不安・電力の確保・市民の支持率の3つが問題視されていたが、体操の世界選手権やサッカーのクラブワールドカップの開催を経て、前2つの問題はそれほど重大でないとされた。市民の支持率に関しては、昨年5月の時点で47%の支持しか得られなかったが、ロンドンオリンピックの盛り上がりや、記憶に新しいメダリストのパレードの盛況が後押しした結果、今年3月のIOCの調査では70%の支持をえることができた。(同調査でマドリード76%、イスタンブール83%)震災からたちなおったことをアピールし、援助の感謝の気持ちをしめす大会にしたいと招致委員会は考えている。開催の目的も大会でうまれた経済効果を被災地の復興に役立てることとしている。大きな課題点もIOCからは提示されていない。勝算はあるだろう。

 

私個人としては、東京で行われるオリンピックを見てみたい気持ちは大いにある。それでも東京の掲げる被災地の復興と支援の考えに矛盾を感じる。経済の援助がまだ必要なのに復興を成し遂げたといえるのか。東北の現状を「これが復興を果たした日本です」と胸を張って誇ることができるのか。確かに大会の開催はあと7年後。まだ7年もある。しかし政府の被災された方に対する有効な援助の見通しが全くたっていない今、その7年はただただ過ぎていくだけかもしれない。今回の選挙はもう各国の招致委員と投票するIOC委員の手に委ねられており、私たちは結果を待つしかない。それでも各都市の主張を見て、世界の情勢を考えるきっかけには十分なりうる。みなさんは東京での開催を望みますか?開催都市発表セレモニーは、9月7日午後5時(日本時間8日午前5時)から。

 

大阪大学法学部国際公共政策学科  山下汐莉

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